- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- コンビニ24時間営業の是非ー高齢化する来店客、持ち回りの深夜営業でインフラ機能を維持してはー
2019年11月08日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1―24時間営業は今の時代に必要か
今年2月、大阪府のコンビニエンスストアのオーナーが人手不足を理由に営業時間の短縮に踏み切った。これをきっかけにコンビニの24時間営業の是非は、世論を巻き込む大論争となった。その後、コンビニの深夜営業を短縮する実証実験が開始され、経済産業省がコンビニオーナーの聞き取り調査をするまでとなった。
「24時間タタカエマスカ」とは平成元年の流行語だが、コンビニの店舗はこの頃から増え始めている。2017年では5.8万店、1989年の3.5倍にもなるが、この間、生産年齢人口は約1割減少している。
時代は平成から令和へと移り、長時間労働は美徳ではなく是正されるべきものとして「働き方改革」が進んでいる。24時間営業というコンビニのビジネスモデルは、今の時代に必要なのだろうか。
「24時間タタカエマスカ」とは平成元年の流行語だが、コンビニの店舗はこの頃から増え始めている。2017年では5.8万店、1989年の3.5倍にもなるが、この間、生産年齢人口は約1割減少している。
時代は平成から令和へと移り、長時間労働は美徳ではなく是正されるべきものとして「働き方改革」が進んでいる。24時間営業というコンビニのビジネスモデルは、今の時代に必要なのだろうか。
2―高齢化するコンビニ来店客
高年齢層では、若者と比べて深夜のコンビニ利用が少ないことは容易に予想できる。今後、更なる高齢化の進行により、24時間営業へのニーズは低下するはずだ。
実はセブンイレブンの来店客は日本の人口以上に高齢化している。1989年から2017年にかけて、50歳以上の人口は全体の29.7%から46.4%へと約1.5倍増にとどまる(総務省「人口動態調査」)。
コンビニ来店客が人口以上に高齢化が進む背景には、若者の消費行動の変化と高齢単身世帯の増加があげられる。
実はセブンイレブンの来店客は日本の人口以上に高齢化している。1989年から2017年にかけて、50歳以上の人口は全体の29.7%から46.4%へと約1.5倍増にとどまる(総務省「人口動態調査」)。
コンビニ来店客が人口以上に高齢化が進む背景には、若者の消費行動の変化と高齢単身世帯の増加があげられる。
3―若者のコンビニ離れと増える高齢単身世帯
アベノミクスで景気は一旦回復したものの、バブル崩壊後に長らく続いた景気低迷の中で、若い世代ほど厳しい経済状況にある。非正規雇用者が増え、正規雇用者でも賃金水準が低下しており、少子高齢化による将来の社会保障不安もある。
一方で、現在では技術革新によって、安くて品質の良い商品やサービスがあふれている。成熟した消費社会に生まれ育った世代は、コストパフォーマンス意識が高い傾向がある。定価で商品が売られるコンビニよりも、値引き率の高いディスカウントストアやネット通販などを利用し、十分に比較検討した上で商品を買う傾向がある。また、未婚化や晩婚化、核家族化の進行で高齢単身世帯が増えている。現在、単身世帯は全体の3割強であり、うち3分の1が65歳以上だ(「国勢調査」)。
高齢単身世帯のライフスタイルとコンビニは親和性が高い。コンビニの商品は小分けの惣菜や3枚入りの食パンなど、商品単位が小さい。また、住宅街にもあり、遠くのスーパーよりも利便性が高い。
高齢単身世帯は、高齢化の進む地方部で多いため、人手不足に悩む地域ほど、実は深夜営業の必要性は低下している。
また、コンビニは家事の時短化ニーズの強い共働き世帯の受け皿でもある。現在、18歳未満の子のいる世帯の約6割が共働きだが(厚生労働省「平成30年国民生活基礎調査」)、子育て世帯では、深夜営業に対するニーズは強くないだろう。
一方で、現在では技術革新によって、安くて品質の良い商品やサービスがあふれている。成熟した消費社会に生まれ育った世代は、コストパフォーマンス意識が高い傾向がある。定価で商品が売られるコンビニよりも、値引き率の高いディスカウントストアやネット通販などを利用し、十分に比較検討した上で商品を買う傾向がある。また、未婚化や晩婚化、核家族化の進行で高齢単身世帯が増えている。現在、単身世帯は全体の3割強であり、うち3分の1が65歳以上だ(「国勢調査」)。
高齢単身世帯のライフスタイルとコンビニは親和性が高い。コンビニの商品は小分けの惣菜や3枚入りの食パンなど、商品単位が小さい。また、住宅街にもあり、遠くのスーパーよりも利便性が高い。
高齢単身世帯は、高齢化の進む地方部で多いため、人手不足に悩む地域ほど、実は深夜営業の必要性は低下している。
また、コンビニは家事の時短化ニーズの強い共働き世帯の受け皿でもある。現在、18歳未満の子のいる世帯の約6割が共働きだが(厚生労働省「平成30年国民生活基礎調査」)、子育て世帯では、深夜営業に対するニーズは強くないだろう。
4―コンビニはどうあるべきか
24時間営業をやめれば利便性が低下すると言う意見もある。しかし、今は、注文後に数時間で商品が届くネット通販等の代替手段もある。コンビニだけが24時間営業に固執して疲弊する必要はない。
一方でコンビニはインフラ機能としての存在意義も大きい。特に高齢単身世帯の多い地方部では、24時間営業の店舗が全く無いと、緊急時の不安は高まる。
そこで提案だが、地域の診療体制のように、コンビニ各社が持ち回りで24時間営業を担ってはどうか。24時間営業をする店舗が1つでもあればインフラ機能を維持できる。また、減っているとはいえゼロではない深夜需要を捉えることで、コンビニ側の売上げも担保できる。
なお、コンビニは24時間営業を前提としたビジネスモデルだ。よって、営業時間を変えれば、製造や物流、店舗運営などの全てのシステムを見直す必要がある。
一方でコンビニはインフラ機能としての存在意義も大きい。特に高齢単身世帯の多い地方部では、24時間営業の店舗が全く無いと、緊急時の不安は高まる。
そこで提案だが、地域の診療体制のように、コンビニ各社が持ち回りで24時間営業を担ってはどうか。24時間営業をする店舗が1つでもあればインフラ機能を維持できる。また、減っているとはいえゼロではない深夜需要を捉えることで、コンビニ側の売上げも担保できる。
なお、コンビニは24時間営業を前提としたビジネスモデルだ。よって、営業時間を変えれば、製造や物流、店舗運営などの全てのシステムを見直す必要がある。
(2019年11月08日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/12 | 増え行く単身世帯と家計消費への影響-世帯構造変化に基づく2050年までの家計消費の推計 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/06/06 | 家計消費の動向(単身世帯の比較:~2025年3月)-節約余地が小さく、二人以上世帯と比べて弱い消費抑制傾向 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/06/06 | 家計消費の動向-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
2025/05/28 | インバウンド消費の動向(2025年1-3月期)-四半期初の1千万人越え、2025年の消費額は10兆円が視野 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年06月12日
インド株式市場における国内投資家の存在感と資金構造の変化 -
2025年06月12日
職域における金融経済教育の進展に向けて-人的資本経営における戦略的意義と普及に向けた提言 -
2025年06月12日
ロシアの物価状況(25年5月)-インフレ圧力の軽減傾向が継続 -
2025年06月12日
金融技術革新の4類型とその波及効果-キャッシュレス化にみる「制度から始まるイノベーション」の形 -
2025年06月12日
欧州経済見通し-回復基調だが、関税を巡る不確実性は大きい
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
【コンビニ24時間営業の是非ー高齢化する来店客、持ち回りの深夜営業でインフラ機能を維持してはー】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
コンビニ24時間営業の是非ー高齢化する来店客、持ち回りの深夜営業でインフラ機能を維持してはーのレポート Topへ